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第3話-③ 会えるまで

Auteur: 青芭伊鶴
last update Date de publication: 2026-06-26 19:19:51

 ただただ立ち尽くしていた私には、誰も声をかけてくれる人はいなくて。だから私はもう帰るしかないのかなって思った。

 俯きながら人々の間を通り過ぎようとしたとき、誰かが私の腕を引いた。

「ごめんっ」

 その声は、雪菜さん? と思って、振り返る。

「うちの弟、ちょっとだけ気が立ってて……もしよければ、私と連絡を取らない? 伊都のことで悩んでいると思うから、話くらいは聞けると思うし」

「でも、雪菜さんもご両親のことで悩んでいるんじゃないんですか?」

「ま、まあ、そうなんだけど、パパとママは……なんていうか、私には興味がないから」

 寂し気で空っぽな声でポツポツとつぶやいた雪菜さん。

 どんな過去を抱えているのか、とても気になったけど、今はそんなことを聞けるような状況じゃないことは、彼女の表情を見るだけで十分だった。

「いっつもパパとママは、伊都の事ばかり心配するの。私には興味が無くて、雑に扱ってくるから……。本当に嫌になるのよ。本当に嫌」

「そ、そうなんですね」

「うん。ごめんね、私ばっか話しちゃって。それじゃあ、LINE交換しようよ」

「いいですよ。私で良ければ、ぜひ」

 口角が緩むことなく、私の表情は固くなってたと思う。LINE交換をしていた私にも、雪菜さんは優しく接してくれた。

 それでも、なんだか、一気に疲れがやってきた。私はただ伊都に会いたかっただけなのに、雑な態度で避けられた。なにが悪かったの? ねえ、伊都……。

「じゃあ、これで」

「はい」

「また連絡してね。私、あなたの味方だから。出会って早々、何言ってるのか分からないと思うけど……」

「大丈夫です。すごく助かります」

「そう? じゃあ、またね」

「はい、また」

 そう言って、私は改札を通ることにした。

 伊都からの言葉に、少しだけ涙を流しながら──。

【伊都Side】

 俺は理桜が改札を通っていくのを、遠目で見ていた。

 すると、姉貴が俺の頭を軽く殴る。背が高い姉貴は、俺と同じくらいの172センチ。デカ女なんて言った先には、キレ散らかしてしまう。

「アンタの彼女の理桜ちゃん、最後に泣いてたよ」

「……」

「何したの、あの子に」

 正直に言うしかない。姉貴が俺に詰め寄るってことは、理桜から何かを察したからだろう。俺は目をそらして、俯きながら呟く。

「既読無視、してただけ」

「本当にそれだけ?」

 姉貴の鋭い質問に、俺の体は冷や汗をかいてしまう。

「なんで既読無視するの?って聞かれて、返事返さなかった……」

「どうして?」

「女のそういうとこ、ほんと怠い」

「アンタねぇ!」

「ごめん、嘘だって。冗談だよ」

 思わず出てしまった言葉に、取り返しがつかないことは分かっていた。でも、言葉に出てしまった。俺にとっては初めての恋愛。それに彼女から連投でメッセージが来るとは思わなかった。

 それだけのことなのに。俺は何てことを言ってしまったんだ。

 気が付くと、姉貴は「信じられない」と言ったように眉間に皺を寄せていた。

「俺が惚れた女を傷つけてしまうのは、辞めたいんだよ」

「でも、今、既に彼女を傷つけたじゃん」

「それはそう、だけど」

「意味無いよ、その感情。だからもうアンタ、ちゃんと謝ったほうがいい。今すぐに」

「嫌われるよ」

「今すぐなら嫌われないから」

 そう言われて、俺はスマホの画面を開く。LINEの些細な会話。それらを見ていたら、胸が痛くなる。俺はもう、彼女の傍に居られないというのに──。

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